一般社団法人 秋田県中小企業診断協会

秋田市が外旭川へのイオン進出を事実上拒否 中心市街地活性化を目指す

2015.12.02

11月26日、秋田市が外旭川地区に計画されていた「イオンタウン」の進出について、「地元の発展に寄与しない」という意見をまとめたそうです。

秋田市は11月26日、イオンタウンが表明した秋田市外旭川地区における「秋田北/農/工/商共存型まちづくり構想」の検証結果を公表した。

構想のメリットとデメリットなどを整理した上で、秋田市では、秋田市総合計画、秋田市国土利用計画、秋田市総合都市計画のもと、市街地の無秩序な拡大を抑制し、コンパクトな市街地形成と中心市街地のさらなる活性化に取り組んでいくこととしており、市が進める「都心・中心市街地」と6つの「地域中心」を核とした持続可能な集約型の市街地形成の方向性と整合しないと述べている。

流通ニュースより引用

イオンの外旭川地区への出店については、2012年から議論になっており、3年の期間を経て、ようやく一応の決着がついたようです。

3年という年月は長かったようで、計画が明るみになった2012年と今では、イオンの経営状態や秋田市中心市街地の状況も大きく変わりました。

イオンの肥大化

イオンの経営状態を見るには、決算書を見るのが手っ取り早いです。
これは、2015年第2四半期(3月から8月)の決算の内容です。

2015年第2四半期
売上高:4,074,889百万円
営業利益:72,266百万円
経常利益:72,852百万円

売上高4兆円で、営業利益を720億円出しています。

こちらが、3年前の2012年第2四半期の決算です。

2012年第2四半期
売上高:2,240,139百万円
営業利益:62,175百万円
経常利益:67,572百万円

2012年第2四半期の売上高は、2.2兆円のなので、3年で売上げが1.8兆円増えています。
これは新規出店や買収等によるもので、3年で80%の成長したことになります。

ここまで見ると、イオンが巨大になった印象しかありませんが、売り上げの内訳をみると、少し変化が見えてきます。
以下は、2015年第2四半期の事業別の売上と利益です。

GMS事業
営業収益:1兆3,709 億29 百万円
営業損失:87 億12 百万円(前年同期より43 億55 百万円の減益)

SM・DS(ディスカウントストア)事業
営業収益:1兆5,569 億66 百万円
営業利益:61 億5百万円(前年同期より147 億24 百万円の増益)

小型店事業
営業収益:1,781 億39 百万円
営業利益:21 億63 百万円

ドラッグ・ファーマシー事業
営業収益:2,944 億29 百万円
営業利益:82億11 百万円

総合金融事業
営業収益:1,752 億91 百万円
営業利益:272 億89 百万円

ディベロッパー事業
営業収益:1,326 億32 百万円
営業利益:208 億77 百万円

サービス・専門店事業
営業収益:3,747 億15 百万円
営業利益:164 億円

国際事業
営業収益:2,171 億10 百万円
営業損失:9億68 百万円

※)営業収益というのは売上高と同じです。

実は、イオングループの主力である総合スーパー事業(GMS)は赤字なのです。

この背景には、ネット通販の拡大やユニクロなどの専門店の台頭があるのですが、そもそも、総合スーパーというビジネスモデルが時代に合わなくなっていることを示唆しています。

このまま、総合スーパーが儲からなくなったら、どうなるでしょう?

そうです、撤退です。

エリアなかいちの失敗

秋田市は、イオンの郊外への出店を事実上拒否したわけですが、これは長期的には良い決定だと思います。
GMSというビジネスモデルが疲弊しており、出店したところで、人口が減少している秋田市では撤退の可能性が常にあります。

この決定により、秋田市は中心市街地を活性化させる意思を表明したことになります。

秋田市の中心市街地には、「エリアなかいち」という2012年7月にオープンした再開発地域がありますが、その中にある商業施設は、2年も経たずに運営に失敗しました。
商業施設の核テナントが撤退することになってしまったのです。その結果、2014年6月に商業施設を運営していた「秋田まちづくり株式会社」の役員7人が辞任する事態になっています。

この「エリアなかいち」ですが、「美術館」と「商業施設」と「文化交流施設」と「住居施設」と「駐車場」が一緒になったものです。

正直、何が目的なのかよく分からない施設です。
これは、私の推測ですが、この施設は、利害関係者の不満が出ないように多様な意見を取り入れて作った妥協の産物ではないのでしょうか?なぜなら、施設としてのコンセプトがあまりに曖昧で中途半端なのです。

たとえば、商業施設については、そもそも床面積が小さいので大きなテナントは出店できません。集客効果が限定的なのは、計画段階から予想できます。その上、建物の大きさの割に開放感が低く、入りにくい印象があります。商業施設なのに、なぜこのような設計になったのかが疑問です。

住居施設の1階には、ファミリーマートが出店していましたが、すでに閉店して現在は空き店舗です。100メートルほど手前に、駐車場付きのローソンが出店し、駐車場のないファミリーマートは利便性を失いました。

100億円以上かけて、中心市街地を活性化させる施策は行いましが、その費用以上の効果はでていないのが現状です。

中心市街地活性化の方策はあるのか?

多くの地方でも、中心市街地に人を呼び戻すことが課題になっていますが、中心市街地の活性化は、それほど難しくないです。

当たり前ですが、みんなが行きたいと思う魅力ある店舗や施設を作ればよいです。
極端言えば、「ディズニーランド」を作れば、人が集まります。

実現できないアホなことを言うなよ」と思うかもしれませんが
それでは、なぜディズニーランドはあれだけ集客できているのでしょうか?

ディズニーランドの集客といっても、特殊なことをはやっているわけではありません。
徹底的に顧客を楽しませるための施策を繰り返し、その効果を検証し常に改善を行うという、企業が成長していくための「当たり前のこと」をやっているだけです。

新しい施設を作ったところで、人が集まるという時代はとっくに終わりました。
ネット通販でいつもで好きなもの買うことができるのに、どこにでも売っている商品を店頭に並べても売れるわけはありません。

競争原理が働いている地域では、競争力のないお店は容赦なく潰れます。その過程の中で、売るための工夫と経営能力が磨かれます。

誰かがしてくれるのを期待するのではなく、自治体も含めて、自分たちの能力を高めることを真剣に考え実行し、その成果を検証し続けることが、地域の活性化そのものなのです。

この記事の著者

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小笠原貴史

フォームズ株式会社

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