Webのマーケティングを行う上で、有効なツールの1つにGoogleが提供している「キーワードプランナー」があります。
「キーワードプランナー」とは、特定のキーワード(または複数キーワード)が1か月あたり、どの程度検索されているかが分かるツールです。
主に、インターネット広告(Google Adwords)を行う場合に、入札するキーワードを選ぶときに使うものですが、企業の競合調査や販売戦略を練るのにも使用できます。
ネット上で検索されている(人気がある)キーワードから、ライバルの動向や顧客ニーズを推測することができるためです。
そこで今回は、中小企業診断士を含む国家資格である士業が、ネット上でどの程度検索されているかを調べて、現状の確認や将来性の比較をしてみました。
さっそくですが、以下がキーワードプランナーで調べた結果です。
キーワードプランナーによる士業の検索数比較
2015年11月17日の時点で
一番検索されているのは、「行政書士」でした。
行政書士の方には失礼だと思いますが、比較的馴染みのある税理士や弁護士が1位だと思ったので、意外です。
2位は、「社会保険労務士」です。
見かけ上は、4位になっていますが、社会保険労務士は「社労士」という略称があるので「社会保険労務士」と「社労士」を足すと、2位の67,600件になります。
3位は、同数で「中小企業診断士」と「司法書士」でした。
士業としての知名度が高い「弁護士」や「税理士」は、ネット上の検索では下位です。
ひょっとして、このランキングは「士業の人数」と比例しているのでは?
ということで、各士業の登録者数も調べて比較してみました。
検索数と資格登録者数の比較
士業名 | 検索数 | 登録者数 | 検索数/登録者数 |
---|---|---|---|
行政書士 | 74,000 | 45,551 | 1.62 |
社会保険労務士 | 67,600 | 38,445 | 1.76 |
中小企業診断士 | 60,500 | 22,544 | 2.68(2位) |
司法書士 | 60,500 | 21,658 | 2.79(1位) |
公認会計士 | 33,100 | 33,977 | 0.97 |
税理士 | 33,100 | 75,601 | 0.44(最下位) |
弁護士 | 33,100 | 35,045 | 0.94 |
弁理士 | 18,100 | 10,173 | 1.78 |
不動産鑑定士 | 14,800 | 7,767 | 1.91(3位) |
パッと見た感じ、登録者数と検索数は比例していないようです。
面白いのは、登録者(資格保有者)の数に対して、検索されている割合が高いのは「中小企業診断士」と「司法書士」ということです。
逆に、「税理士」は、登録者数よりも検索数の方が少なく、「中小企業診断士」と「司法書士の」の6分の1以下で、ネット上では人気がないです。
それでは、なぜこの違いが生じるのでしょうか?
これは、検索で調べる人の目的を考えると推定できます。
そもそも、中小企業診断士や司法書士という士業名でキーワード検索する人は、大きく分けると2種類に分けられます。
- 「資格そのもの」について調べたい
- 「資格保有者」について調べたい
これら士業の将来性について考えると
(1)の資格そのものを調べたい人とは、主に資格の取得を目指す人、すわち受験者の数と比例すると推定できます。
(2)の「資格保有者を調べたい人」とは、「資格保有者を探している人」と考えられるので、この割合が多い士業については、潜在的なニーズがあると推定できます。
しかし、残念ながら、(1)と(2)の違いについては、キーワードプランナーだけでは分かりません。
そこで、各士業の「受験者数」について調べてみました。
検索数と資格受験者数の比較
士業名 | 検索数 | 受験者数 | 検索数/受験者数 |
---|---|---|---|
行政書士 | 74,000 | 48,869 | 1.51 |
社会保険労務士 | 67,600 | 40,712 | 1.66 |
中小企業診断士 | 60,500 | 16,224 | 3.73(3位) |
司法書士 | 60,500 | 20,130 | 3.23 |
公認会計士 | 33,100 | 10,180 | 3.25 |
税理士 | 33,100 | 41,031 | 0.81(最下位) |
弁護士 | 33,100 | 8,015 | 4.13(2位) |
弁理士 | 18,100 | 5,599 | 3.23 |
不動産鑑定士 | 14,800 | 1,527 | 9.69(1位) |
「不動産鑑定士」が、圧倒的な1位で、受験者数の割に検索数が多いという結果になりました。
これは、受験者が検索しているわけではなく、社会的なニーズで検索されている割合が高いということです。
2位は、「弁護士」です。
3位は、「中小企業診断士」ということになりました。
そして、最下位はやはり「税理士」です。
受験者数が多いにも関わらず、あまり検索されていないということは、ネット上ではニーズが小さいと予想されます。
税理士業界は飽和していると言われており、また会計ソフトの普及もあり、これを反映していると思われます。(税理士の皆さん、ごめんなさい)
まとめ
あくまで、ネット上の検索なので、実社会を反映しているとは言えませんが、ネットの検索は今後増えていきます。
そのため、ネット検索が多いということは、将来的なニーズがあると予想されます。
今回の結果から、以下のような「仮説」が立てられました。
- 中小企業診断士、司法書士や弁護士については、資格保有者に対して検索数が多く、将来的なニーズがある。
- 不動産鑑定士は、資格保有者が少なく希少性がある。検索ボリュームは多くはないが、将来的なニーズはある。
- 公認会計士、弁理士の将来的なニーズは安定的にある。
- 行政書士、社会保険労務士の将来的なニーズは、大きく増えることはない。
- 税理士は、資格保有者数に比べて検索数が少ない。市場の飽和、会計ソフトの普及により、今後ニーズは減少する。
行政書士、社会保険労務士、税理士については、定型業務が多いのでIT化によって仕事が減りそうな印象です。
今回は、キーワードプランナーで各士業の現状確認と将来性について考えてみました。
ただのネット検索だといえば、それまでですが、社会の変化の末端は反映しているはずです。
ネット検索だけでも、事業戦略や業務を改善させる仮説の立案ができるので、ぜひ活用してみてください。
各士業の登録者数、受験者数の出典元
■登録者数
行政書士 :平成27年10月1日現在 日本行政書士連合会
社会保険労務士:平成27年03月31日現在 全国社会保険労務士連合会
中小企業診断士:平成26年04月01現在 資格プラス
司法書士 :2015年04月01日現在 日本司法書士連合会
公認会計士 :2014年12月31日現在(準会員含む)日本公認会計士協会
税理士 :平成27年10月01日 日本税理士連合会
弁護士 :平成26年03月31日 日本弁護士連合会
弁理士 :2014年02月28日現在 日本弁理士会
不動産鑑定士 :平成24年02月02日現在 国土交通省
■受験者数
行政書士 :一般財団法人行政書士試験研究センター 平成26年度
社会保険労務士:厚生労働省 平成27年度
中小企業診断士:中小企業診断協会 平成26年度
司法書士 :法務省 平成26年度
公認会計士 :公認会計士・監査審査会 平成27年度
税理士 :国税庁 平成26年度
弁護士 :弁護士白書 平成26年度
弁理士 :経済産業省 平成26年度
不動産鑑定士 :国土交通省 平成26年度
実は、中小企業診断士の正確な登録者数は分かりません。
通常は、中央組織が把握しているのですが、診断士の場合、そのような組織(中小企業診断協会)への入会義務がありません。
そのため、正確な人数は所轄官庁である中小企業庁(経済産業省)しか分からないのです。
ネットで調べてみたら、資格学校の大原学園が運営する「資格プラス」というサイトに、ソース不明で人数が記載されていました。
中小企業診断士の登録者数は概ね2万人くらいと言われているので、ほぼ合っていると思われます。