一般社団法人 秋田県中小企業診断協会

キーワードプランナーで見る国家資格士業の将来比較

2015.11.18

Webのマーケティングを行う上で、有効なツールの1つにGoogleが提供している「キーワードプランナー」があります。

「キーワードプランナー」とは、特定のキーワード(または複数キーワード)が1か月あたり、どの程度検索されているかが分かるツールです。

主に、インターネット広告(Google Adwords)を行う場合に、入札するキーワードを選ぶときに使うものですが、企業の競合調査や販売戦略を練るのにも使用できます。
ネット上で検索されている(人気がある)キーワードから、ライバルの動向や顧客ニーズを推測することができるためです。

そこで今回は、中小企業診断士を含む国家資格である士業が、ネット上でどの程度検索されているかを調べて、現状の確認や将来性の比較をしてみました。

さっそくですが、以下がキーワードプランナーで調べた結果です。

キーワードプランナーによる士業の検索数比較

2015年11月17日の時点で
一番検索されているのは、「行政書士」でした。

行政書士の方には失礼だと思いますが、比較的馴染みのある税理士や弁護士が1位だと思ったので、意外です。

2位は、「社会保険労務士」です。
見かけ上は、4位になっていますが、社会保険労務士は「社労士」という略称があるので「社会保険労務士」と「社労士」を足すと、2位の67,600件になります。

3位は、同数で「中小企業診断士」と「司法書士」でした。

士業としての知名度が高い「弁護士」や「税理士」は、ネット上の検索では下位です。

ひょっとして、このランキングは「士業の人数」と比例しているのでは?

ということで、各士業の登録者数も調べて比較してみました。

検索数と資格登録者数の比較

士業名 検索数 登録者数 検索数/登録者数
行政書士 74,000 45,551 1.62
社会保険労務士 67,600 38,445 1.76
中小企業診断士 60,500 22,544 2.68(2位)
司法書士 60,500 21,658 2.79(1位)
公認会計士 33,100 33,977 0.97
税理士 33,100 75,601 0.44(最下位)
弁護士 33,100 35,045 0.94
弁理士 18,100 10,173 1.78
不動産鑑定士 14,800 7,767 1.91(3位)

パッと見た感じ、登録者数と検索数は比例していないようです。

面白いのは、登録者(資格保有者)の数に対して、検索されている割合が高いのは「中小企業診断士」と「司法書士」ということです。

逆に、「税理士」は、登録者数よりも検索数の方が少なく、「中小企業診断士」と「司法書士の」の6分の1以下で、ネット上では人気がないです。

それでは、なぜこの違いが生じるのでしょうか?

これは、検索で調べる人の目的を考えると推定できます。

そもそも、中小企業診断士や司法書士という士業名でキーワード検索する人は、大きく分けると2種類に分けられます。

  1. 「資格そのもの」について調べたい
  2. 「資格保有者」について調べたい

これら士業の将来性について考えると

(1)の資格そのものを調べたい人とは、主に資格の取得を目指す人、すわち受験者の数と比例すると推定できます。

(2)の「資格保有者を調べたい人」とは、「資格保有者を探している人」と考えられるので、この割合が多い士業については、潜在的なニーズがあると推定できます。

しかし、残念ながら、(1)と(2)の違いについては、キーワードプランナーだけでは分かりません。

そこで、各士業の「受験者数」について調べてみました。

検索数と資格受験者数の比較

士業名 検索数 受験者数 検索数/受験者数
行政書士 74,000 48,869 1.51
社会保険労務士 67,600 40,712 1.66
中小企業診断士 60,500 16,224 3.73(3位)
司法書士 60,500 20,130 3.23
公認会計士 33,100 10,180 3.25
税理士 33,100 41,031 0.81(最下位)
弁護士 33,100 8,015 4.13(2位)
弁理士 18,100 5,599 3.23
不動産鑑定士 14,800 1,527 9.69(1位)

不動産鑑定士」が、圧倒的な1位で、受験者数の割に検索数が多いという結果になりました。
これは、受験者が検索しているわけではなく、社会的なニーズで検索されている割合が高いということです。

2位は、「弁護士」です。

3位は、「中小企業診断士」ということになりました。

そして、最下位はやはり「税理士」です。
受験者数が多いにも関わらず、あまり検索されていないということは、ネット上ではニーズが小さいと予想されます。
税理士業界は飽和していると言われており、また会計ソフトの普及もあり、これを反映していると思われます。(税理士の皆さん、ごめんなさい)

まとめ

あくまで、ネット上の検索なので、実社会を反映しているとは言えませんが、ネットの検索は今後増えていきます。
そのため、ネット検索が多いということは、将来的なニーズがあると予想されます。

今回の結果から、以下のような「仮説」が立てられました。

  1. 中小企業診断士、司法書士や弁護士については、資格保有者に対して検索数が多く、将来的なニーズがある。
  2. 不動産鑑定士は、資格保有者が少なく希少性がある。検索ボリュームは多くはないが、将来的なニーズはある。
  3. 公認会計士、弁理士の将来的なニーズは安定的にある。
  4. 行政書士、社会保険労務士の将来的なニーズは、大きく増えることはない。
  5. 税理士は、資格保有者数に比べて検索数が少ない。市場の飽和、会計ソフトの普及により、今後ニーズは減少する。

行政書士、社会保険労務士、税理士については、定型業務が多いのでIT化によって仕事が減りそうな印象です。

今回は、キーワードプランナーで各士業の現状確認と将来性について考えてみました。

ただのネット検索だといえば、それまでですが、社会の変化の末端は反映しているはずです。

ネット検索だけでも、事業戦略や業務を改善させる仮説の立案ができるので、ぜひ活用してみてください。

各士業の登録者数、受験者数の出典元

■登録者数
行政書士   :平成27年10月1日現在 日本行政書士連合会
社会保険労務士:平成27年03月31日現在 全国社会保険労務士連合会 
中小企業診断士:平成26年04月01現在 資格プラス
司法書士   :2015年04月01日現在 日本司法書士連合会
公認会計士  :2014年12月31日現在(準会員含む)日本公認会計士協会
税理士    :平成27年10月01日 日本税理士連合会
弁護士    :平成26年03月31日 日本弁護士連合会
弁理士    :2014年02月28日現在 日本弁理士会
不動産鑑定士 :平成24年02月02日現在 国土交通省

■受験者数
行政書士   :一般財団法人行政書士試験研究センター 平成26年度
社会保険労務士:厚生労働省 平成27年度
中小企業診断士:中小企業診断協会 平成26年度
司法書士   :法務省 平成26年度
公認会計士  :公認会計士・監査審査会 平成27年度
税理士    :国税庁 平成26年度
弁護士    :弁護士白書 平成26年度
弁理士    :経済産業省 平成26年度
不動産鑑定士 :国土交通省 平成26年度

実は、中小企業診断士の正確な登録者数は分かりません。
通常は、中央組織が把握しているのですが、診断士の場合、そのような組織(中小企業診断協会)への入会義務がありません。
そのため、正確な人数は所轄官庁である中小企業庁(経済産業省)しか分からないのです。
ネットで調べてみたら、資格学校の大原学園が運営する「資格プラス」というサイトに、ソース不明で人数が記載されていました。
中小企業診断士の登録者数は概ね2万人くらいと言われているので、ほぼ合っていると思われます。

この記事の著者

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小笠原貴史

フォームズ株式会社

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