一般社団法人 秋田県中小企業診断協会

中小企業はいいカモ?情報システムのベンダーロックイン問題

2015.11.13

企業が情報システムを導入する際には、必ず「ベンダーロックイン」という言葉を忘れないでください。

「ベンダーロックイン」とは、どういうことかと言うと

ベンダーロックイン(英:vendor lock-in)とは、特定ベンダー(メーカー)の独自技術に大きく依存した製品、サービス、システム等を採用した際に、他ベンダーの提供する同種の製品、サービス、システム等への乗り換えが困難になる現象のこと。

ベンダーロックインに陥った場合、製品、サービス、システム等を調達する際の選択肢が狭められる。価格が高騰してもユーザーはそれを買わざるを得ないため、コストが増大するケースが多い。また、市場の競争による恩恵を十分に受けられない可能性もある。

Wikipediaより引用

一度導入してしまうと、他社の製品に切り替え難くなるということがポイントです。

そのため、情報システムを売る側は、必ず情報システムを売った後の「保守契約」のことも考えて開発費用の見積もりをします。

これはすなわち、「システムを売る時の値段はある程度抑えて、保守費用で儲けをだす」ということです。

情報システムが、特定のITベンダーの技術に依存したものになると、保守契約はその1社独占になるため、言い値で契約せざるを得なくなります。(これ自体は、商売のやり方としては、当然アリなのですが…)

ベンダーロックインにもメリットはある

ベンダーロックインは、高コストになるので総じて良くないことですが、メリットもあります。

それは、ITベンダーと長期的な関係は構築しやすいということです。

特に、社内に情報システム関係の人材がいない企業にとっては、ITベンダーとの付き合い方は重要です。長期的な関係を構築することで、ベンダーと企業間での情報共有が進み、逆にコストが下がるケースもあります。

コストよりも、ITベンダーとの関係性を重視するのであれば、ベンダーロックインは悪いことではありません。

ベンダーロックインを回避するには?

ベンダーロックインを回避するために、まず最初に企業自身が、どのような情報システムが必要なのかを、正確に理解する必要があります。

中小企業では「有名なベンダーだから大丈夫」ということで、十分に検討せずに、安易にその情報システムを導入してしまうケースがあると思いますが、これではベンダーの思う壺です。

特に、有名なベンダーほど、自社の独自技術をアピールし、他社より優れていると売り込んできます。

しかし、その技術は本当に必要なのでしょうか?

特殊な処理が必要でない限り、企業の情報システムに独自技術は必要ありません。

むしろ、大切なのは、独自技術を使わないことです。

オープンソースソフトウェアの利用

現在のシステム開発の主流は、オープンソースソフトウェア(Open Source Software)による開発です。

オープンソースソフトウェアとは、簡単に言えば、世界中の(優秀な)技術者が集まって開発しているソフトウェアです。
その特徴として、非常に高品質で、しかもほぼ無料で使用できるのですが、サポートがないというデメリットもあります。

実際、有名なオープンソースソフトウェアであれば、利用実績が豊富なのでトラブルもめったに起きません。仮に発生して世界中の技術者が情報を共有しているので、解決策をみつけることができます。

また、オープンソースソフトウェアであれば、国内にも開発経験のある技術者がたくさんいるため、人員の確保もしやすいです。

ベンダーロックインを回避する最も簡単な方法は、このオープンソースソフトウェアを使うことです。

ロックイン回避には、マルチベンダーよりオープンソースソフトウェア

ベンダーロックインを回避するもう1つの方法は、「マルチベンダー」です。

マルチベンダーとは、複数のITベンダーが、1つの情報システムの開発に加わることです。

しかし、これはあまりオススメできません。
確かに競争原理が働くのですが、企業間のコミュニケーションが増えるので、同時に開発コスト増えます。また、企業間の仕様のすり合わせも必要であるため、ソフトウェアの品質も下がる傾向があります。

せっかく、新しい情報システムを導入してもバグだらけで使い物にならない、修正のコストもかかるというのじゃ困りますよね。

そこで、中小企業の情報システムの開発は、原則1社が行い、オープソースソフトウェアを使うのが良いです。

オープンソースソフトウェアであれば、開発元との契約を止めたとしても、代わりITベンダーを見つけることも可能です。(ベンダーの切り替えコストが低い)

社内時に人材がいない場合は、外部コンサルタントの利用を

自社製品を持つITベンダーの営業は、自社の製品を売るのが仕事なので、オープンソースソフトウェアによる代替品の説明は避けたがる傾向があります。

しかし、オープンソースソフトウェアでの開発は可能なのか、必ず聞いてください。また、複数のベンダーに対して、見積もりをもらってください。

もし、社内で技術的な判断ができる人材がいない場合は、外部のコンサルタントを活用してください。

情報システムの規模にもよりますが、ベンダーロックイン回避や無料のソフトウェアを活用することで、コンサルタントに支払う金額よりも、大きなコスト削減が期待できます。

この記事の著者

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小笠原貴史

フォームズ株式会社

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