今回は第3回目ということで、そろそろ実務であるマイナンバーを(従業員から)取得する場合の手続きについて、解説したいと思います。
マイナンバーを社内で管理していく上で、最初に従業員からマイナンバー情報を取得しなくてはいけないのですが、この取得手続きもマイナンバー法で定められています。
そのため、適当に取得してはいけません。
取得時に必要な手続きは、大きく分けると2つです。
- 利用目的の通知(または公表)
- 本人確認
利用目的の通知
「利用分野編」で解説した通り、企業においてマイナンバーは「社会保障」と「税」の分野での利用に限られています。
具体的には、以下のような事務手続きが利用目的ということになります。
・健康保険・厚生年金保険届出事務(社会保障)
・源泉徴収作成事務(税)
これを従業員に対して「通知」する必要があります。通知方法は「書面による通知」のほかに「社内LANによる通知」も可能です。
利用目的通知の文例
当社は、当社の従業員(役員等を含む)から収集した、従業員、その配偶者及び扶養親族等の個人番号を、以下の目的で利用します。
1.源泉徴収票作成事務
2.健康保険・厚生年金保険届出事務
3.…
この利用目的は、従業員各位が、個人番号を当社に提供することになる配偶者、扶養親族等に伝えてください。
本人確認
次に、マイナンバーを提出した従業員の本人確認をする必要があります。
この本人確認は、「身元確認」と「番号確認」の2つの手続きに分かれています。
身元確認
身元確認とは、マイナンバー提出の手続きを行っている者が、そのマイナンバーの正しい持ち主であるかを確認することです。
通常、身元確認には以下に示す「運転免許証」「パスポート」などを使用します。
身元確認書類 | 有効条件 |
---|---|
・マイナンバーカード(表面・裏面) | - |
・運転免許証 ・パスポート ・身体障害者手帳など… |
- |
・写真付き学生証 ・写真付き身分証明書 ・写真付き資格証明書 |
氏名又および生年月日または住所が記載されているもので、提出時において有効なもの |
上記の身元確認書類の提出が難しい場合は、次の書類2種類でも構いません。
(詳細は、以下に示す「従業員への通知文サンプル」を確認してください)
・国民健康保険、健康保険、船員保険、後期高齢者医療もしくは介護保険の被保険者証
・健康保険日雇特例被保険者手帳
・国家公務員共済組合もしくは地方公務員共済組合の組合員証
・国民年金手帳
・国税、地方税、社会保険料、公共料金の領収証
・戸籍の附票の写し(謄本もしくは抄本も可)
・住民票の写し
・住民票記録事項証明書
・母子健康手帳
番号確認
「番号確認」とは、そのマイナンバー(個人番号)が正しいものであるかの確認です。
現時点で次の3つにマイナンバーが記載されています。
- 個人番号の通知カード
- 個人番号カード(マイナンバーカード)
- 住民票
(1)は、自宅に郵送されてくるマイナンバーが記載された紙製のカードです。
(2)は、市役所等に申請して発行される顔写真付きのカードです。身分証明書にもなります。
もし、本人確認として(2)個人番号カード(マイナンバーカード)を提示した場合は、身元確認と番号確認を同時に行うことができます。
取得時期
マイナンバーは、「平成28年1月以降」の「社会保障」と「税」の手続きに使用するので、マイナンバー制度の開始と同時に、すぐに取得する必要はありません。
企業実務の上で、最も適当な時期は、年末調整を行うための「扶養控除等(異動)申告書の提出」のタイミングです。
扶養控除等(異動)申告書にはマイナンバーを記載箇所があるので、本人確認を行ったうえで、マイナンバーが記載された申告書を取得するのが良いです。
なお、扶養控除等(異動)申告書には、従業員の扶養家族のマイナンバーも記載しなければいけません。
そのため「家族の本人確認も必要あるの?」と疑問に思いますが、事業主には従業員家族の本人確認をする義務はありません。
これは家族の本人確認をしなければいけないのは、その従業員自身になるためです。
従業員家族の本人確認はその従業員自身が行い、その従業員の本人確認は事業主が行うということです。
ただし、他の書類、例えば「国民年金第3号被保険者関係届」は、事業主が家族の本人確認を行わなければなりません。
一度取得したマイナンバーは、利用目的を通知していれば、その利用の範囲内で使うことができます。
「家族の本人確認」という手間を省くために、「扶養控除等(異動)申告書の提出」のタイミングでマイナンバーを取得するのが、最も良いタイミングというわけです。
従業員への通知文サンプル
今回のまとめとして、以下の「従業員へのマイナンバー取得通知」サンプル文書を確認してみてください。
従業員へのマイナンバー取得通知文書のダウンロード(MS Word)
この文書に利用目的も記されているので、内容を少し変えるだけで、そのまま従業員への通知文書にすることができます。